チリにも食らいつく

Web系で働く会社員が、日常の些細なネタをあげつらいます。

【豊川信用金庫事件】女子高生の雑談から20億が動いた話

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おはようございます、expa(@expajp)です。

エイプリルフールから2日たちました。

なんか、今年は「これ!」っていうネタがなくてイマイチ盛り上がりに欠けちゃいましたね。

2010年まで毎年異様に気合の入ってた円谷プロダクションがエイプリルフールやらなくなっちゃって寂しい……

エイプリルフールをネタにするのはだいぶ周回遅れな感じは否めないのですが、関係あるようで関係のないネタなので問題ないか・

女子高生の他愛ない雑談から広がったデマで20億が動いた話、「豊川信用金庫事件」です。

事件の概要

豊川信用金庫事件(とよかわしんようきんこじけん)は、1973年12月、愛知県宝飯郡小坂井町(現・豊川市)を中心に「豊川信用金庫が倒産する」という噂(デマ)から取り付け騒ぎが発生し、短期間に約20億円もの預貯金が引き出された事件。

豊川信用金庫事件 - Wikipedia

事件は、1973(昭和48)年の愛知県宝飯郡小坂井町(現在は豊川市)です。

電車内で女子高生どうしが「豊川信金に内定決まった」「けど、信用金庫なんてこの先危ないんじゃない?」というよくある雑談をしていたところ、それを発端として豊川信金が潰れるという噂が街中に広まり、豊川信金から20億円以上が引き出される取り付け騒ぎに発展した、というもの。

デマがパニックを引き起こした例として、よく心理学や社会学の教材になるんだそうです。

デマの伝搬

この事件、面白いのはデマの伝搬の経緯が詳細に明らかになっているところなんですよね。

デマはだいたい以下のような経緯で広まっています。

  • 女子高生が「信用金庫なんて危ないんじゃないの?」というよくある雑談をし
  • 女子高生のうちの一人が家に帰って「信用金庫って危ないの?」と親戚に言い
  • その人がさらに別の親戚に「豊川信金って危ないの?」と言い
  • その人が美容院に言って「豊川信金危ないんだって」と言い(この時点で疑問形でなくなっている
  • 美容院の人がその話をしていると、居合わせたクリーニング屋さんの知るところとなり
  • このクリーニング屋さんの店で電話を借りたガス屋さんが偶然「豊川信金から120万下ろしといて」って仕事の指示をしたために、噂を耳にしていたクリーニング屋さんは「噂は真実だ」と確信し
  • クリーニング屋さんが知人にこの話を広めた結果、アマチュア無線愛好家が無線でこの話をさらに広め
  • 騒ぎに発展、短期間で20億円以上のお金が引き出される

なんかクリーニング屋さんがものすごく悪い人のように見えますが、もちろんこの人たちに悪気はありません。たまたま電話を借りに来たガス屋さんがわざわざ豊川信金を指定して大金を引き出す指示をするとかいう、とんでもない偶然が起こってしまったのがすべて悪いのです。

悪い人ではないですが、間が悪い人ではあったようですね。。。

騒ぎの収束

ともあれ、噂は広まり、騒ぎに発展しました。

しまいには、「明日はもうあそこのシャッターは上がるまい」「理事長が自殺した」だの根も葉もないにしてはエスカレートしすぎじゃないかということまで言われる始末。

当然ながら豊川信金側は寝耳に水の騒ぎで、なんとかして騒動を収めようと必死に手を回します。

マスコミ各社の報道や、日銀の考査局長による記者会見現金を金庫の前に積み上げるというアピールによって、騒動は徐々に沈静化が図られました。

極めつけは、自殺したという噂の流れた理事長が窓口に立ったという話。Wikipediaでは要出典タグがついちゃってるのでソースがないみたいですが、これ、本当だとしたら笑えるなあ……

理事長の姿を窓口に見つけた瞬間、みんなどんな顔したんだろう……

まあ、大きな被害を出すことなく、騒動は沈静化したようです。

雑感

この事件、シリアスな笑いとしてはかなりハイレベルなものじゃないでしょうか……とか言ったら怒られちゃうんですかね。

ものすごく間の悪いガス屋の店主とか、死んだはずの理事長が窓口に立っているとか、金庫の前にわざわざ現金が積み上げられる光景とか…… 笑いとしては野球の珍プレー好プレーに近いです。本人たちが必死な上にすでに過去の出来事だからこそ、シュールな笑いがこみ上げてくるこの感覚。

ところどころ、「お店で電話を借りる」だとか、「アマチュア無線で噂が広まる」だとか、時代だなーという部分がありますが、一番は「井戸端会議で噂が広まる」という点でしょうか。。。

WELQ騒動が記憶に新しいように、いまどきデマを拡散する媒体は圧倒的にネットですもんね。たとえ知り合いの間でも。

とはいえ、話の真偽を判断するリテラシーについては、示唆を含む話です。

裏を取らずに大きな話を断定調で人に伝えるってそれ自体がもうありえないレベルだと思うんだけども、こういう感覚はユーザ間では完全に匿名が前提だった2000年代初頭のインターネットを経験している世代ならではなんでしょうか。。。

東日本大震災のときにデマがTwitterで出回ったりだとか、中高生がLINEでデマやらコピペやらを広めたりだとか、もちろんWELQ騒動だとか、そういう話を聞くとデマを拡散する媒体としてのインターネットに対する警戒感がみんな薄いような気がしますね。

まとめ

この事件、笑えるけど真面目に考えるとためになるおはなしでした。

インターネットは用法用量を守って正しくつかいましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ読者登録をお願いします。

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